最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 諸般の事情で | トップページ | てんぐのかくれみの »

2005.07.30

花咲かじいさん

むかしあるところに正直じいさんとばあさんが住んでいた。ある日二人が畑から戻ってみると、うすの中に子犬が一匹、すやすやと眠っていたそうな。子供のいない二人は大喜び。ポチという名をつけて大切に育てることにした。

ばあさんがほうきで掃き掃除をすると、ポチも尻尾でその真似をする。じいさんが枯れ木を集めると、ポチも一緒になって小さな背中に少しだけ枯れ木をのせて一緒に運ぼうとする。ポチなりの一生懸命さが二人にはとても嬉しく、たいそう可愛がった。

一年も経ち大きくなったポチ。ある日、ポチの世話をしていたばあさんが腰を抜かし、その驚きの声でかけつけたじいさん。なんとポチが人間の言葉を発したのだ。ポチいわく、「背中に鍬をつけてこちらについてきて」。じいさまは驚きながら、ポチの言うとおりにした。

ポチはしばらく歩くと地面の匂いをかぎ、じいさまに言った。「ここを掘ってくださいな」。言われるままに、ポチにつけた鍬を使って掘ってみると、そこからは大判小判がざっくざっくと出てきた。「うひゃー、こいつはたまげた」。

このウワサ話を聞きつけた、正直じいさんらの家の隣に住んでいるいじわるじいさん。うらやましくてしょうがない。早速押しかけてきて無理やりポチを連れて行き、宝のありかを教えろと命じた。

ところがポチはそんなことを教えようとはしない。勘違いしたいじわるじいさんがあちこち掘り出すと、出てきたのはゴミやお化け、蛇、蜂。刺されるわゴミだらけになるわびっくりするわでエライ目にあってしまう。

「この莫迦犬が!」怒ったいじわるじいさんは、鍬でポチを打ち殺してしまった。

「ポチ、ポチや……」正直じいさんとばあさんは、ポチの死をとても嘆き悲しんだ。こんな辛い、悲しい思いをしたのは二人にとって初めてのこと。二人は涙を流しながら、ポチの墓をつくり、一本の木の枝を刺してあげた。

それから一年。ポチの墓に刺した木はずいぶんと大きくなった。二人はその木でうすを作った。うすにすれば、ポチの生まれ変わりのようでもあるこの木を、ずっとそばにおいておける。

その木で作ったうすが完成し、二人はポチのためにモチを作ることにした。ところがどうだろう。そのうすで作ったもちが、みんな小判になるではないか。正直じいさんとばあさんは、きっとポチのおかげだと思う一方で、「そんなに気を使わんでも……」と思いで心がいっぱいになった。

ところがその様子を見ていた隣のいじわるじいさんとばあさん。今度はそのうすをひったくると、自分らも小判を手にいれようとモチをつき始める。ところが出てくるのは小判どころか牛の糞や魚のはらわたなどゴミばかり。

「くそったれ!」怒りにまかせていじわるじいさんは斧でうすを叩き割っただけでなく、かまどにくべて燃やしてしまった。うすはすっかり灰になってしまった。

正直じいさんは「さぞかし熱かったろうな、ポチや……」と、灰になったうすを目の前に涙するばかり。そしてその灰を大事に家に持って帰った。灰になっても、ポチの形見であるに違いはない。

ところがその灰が、ひゅーっと風で飛ばされた。さらに灰がふりかかった枯れ木が見る見る間に花が咲き出してしまう。「あらま、こいつは不思議なこった」

「ポチが花を咲かせます。白いきれいな花を咲かせます。みんな見てくださいな。枯れ木に花を咲かせましょう」正直じいさんがうすの灰をばらまき、花を咲かせて皆の衆に見せて回る。そこへ殿様が通りかかり、様子を見て大喜び。「あっぱれあっぱれ、あのじいさまにほうびを取らせよ!」

ところがそこへいじわるじいさんが飛び出し、正直じいさんが持っていた灰を奪い取り、そして叫んだ。「そのほうびはおらがもらうだ! それ、枯れ木に花をさかせるだ」

いじわるじいさん、灰をまく。ところが花が咲くどころか、灰は人々の目や喉に入って周囲は大パニック。さらに殿様の頭に灰がかぶさり、殿様もカンカン。

いじわるじいさんも灰でくしゃみをし、そのはずみで木から落ちてのびてしまった。一方正直じいさんは殿様からたくさんのほうびをいただいたということだ。


おしまい。

【補助解説】
岩手地方の昔話で、非常に知名度の高いお話でもある。物語自身の他に、「♪裏の畑でポチが鳴く。正直爺さんほったれば~」という歌でもよく知られている。物語ではいじわるじいさんは木から落ちてのびてしまっておしまいになっているが、歌では「灰が殿様の目に入り、怒った殿様がいじわるじいさんを牢屋につないだ」とある。まぁ、因果応報という点では変わりがないだろうが。それにしても「臼(うす)」といわれて、そのイメージがすぐに頭に思い浮かぶ人、どれくらいいるだろうか。最近では必要性がほとんど無くなったため、名前そのものを知らない人も多いかもしれない。餅つきなどには欠かせない道具なのだが……。

【何を学ぶか】
ありきたりな話としては「やましい心で行動すると必ずしっぺ返しを食らう」というところだろうが、それはあまりにも当たり前すぎる。ここは、正直じいさんがポチのうすが燃やされて出来た灰を集めたところに注目してみることにする。

普通ならたとえ大切にしていたものだったとしても、それが燃やされて出来た灰を大切に持ち帰るということはしない。だが正直じいさんは見過ごさずに灰を持ち帰り、帰り際に偶然吹いた風によって、その灰の効力を知ることができた。そしてそれが最終的に、殿様からごほうびをもらえるきっかけともなった。「多くの人が気がつかない、見過ごすものや情報の中にも、チャンスはたくさん埋もれている」ということだろう。「松茸は獲られるまで千人の股をくぐる」(物理学者 西沢潤一氏の言葉)に共通するところがある。

ちなみに灰は、ポチとか木のうすが原材料であるかどうかはともかくとして、実際に肥料や土壌の改良にも有効である。もっとも物語のように、蒔いたとたんに効果が出て花が咲く、なんてことはありえないが。この物語には、そういった農業的教訓も含めているのかもしれない。

« 諸般の事情で | トップページ | てんぐのかくれみの »

日本昔話に学ぶ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 諸般の事情で | トップページ | てんぐのかくれみの »

最近の写真