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2005.08.06

てんぐのかくれみの

むかしあるところに、彦八というズル賢い男の子が住んでいた。そのそばにある山の奥にはてんぐが住んでいて、「かくれみの」という面白いものをもっている噂があった。このみのを身につけると、姿を消すことができるそうな。

彦八はどうにかそのかくれみのを手に入れたいと考え、一計を企てた。ある日彦八は一本の竹筒を持ち、山に登っていく。そして山の頂上にたどり着くと竹筒を取り出してのぞくふりをしながら「すげぇー、よく見えるぞ」と大声で騒ぎ立てた。

するとその声を聞きつけ、どこからともなくてんぐが現れた。彦八は気がつかないふりをしながら「大阪の町まで見えるぞ、ああ、すごい」。てんぐはたまらなくなり「おい小僧、お前の持っている遠眼鏡のような竹筒、ちょっと見せてくれ」と頼み込む。

ところが彦八は知らん顔。「ダメダメ。これは千里通しというおいらの大事な宝物なんだから。……おお、京の都じゃ皆で踊っているぞ。ふむふむ」と見えもしない京の都のようすを一人ごちる。

てんぐはますます彦八の持っている竹筒をのぞきたくなり、懇願する。「ほんのちょっとだけ、見せてくれんか?」彦八はしめしめと思いつつもまだ「ダメだよ」とてんぐの願いを聞き入れない。

てんぐはどうしても彦八の竹筒をのぞきたくなり、両手をついてお願いした。「そうだ、小僧。わしのかくれみのと交換しないか?」彦八はニヤリ。彼の策略にてんぐは見事引っかかってしまったのだ。「これを着れば、姿を消すことができるんだ。これだって立派な宝物。お願いだから、交換して……」

彦八は残念そうなふりをしながら「そうだなぁ、そんなに頼むのなら、ほんのちょっとだけ」と答え、てんぐのかくれみのと単なる竹筒とを取り替えてしまった。すばやくみのを着込む彦八。すーっと姿は消えてしまう。

「ほう、どれどれ。これが千里通しか……何も見えないぞ、おい、小僧? ……おい!」姿かたちを消した小僧を探しつつ、てんぐはようやく自分がだまされたことに気がついた。だが、もう彦八の姿は見えない。「くやしーっ!」自分の不甲斐なさにてんぐは泣き怒り。でももうどうしようもない。

一方、まんまとかくれみのを手にいれた彦八は、姿が見えないのを良いことにいたずらのやりたい放題。人の頭を殴って近くの人とケンカさせたり、飴屋の商売道具を横取りして飴屋はもちろん子供たちまでもびっくりさせたり、魚屋からタコを盗んでお坊さんの頭に乗っけたり。奇怪現象が次々に起き、町は大騒ぎ。家に帰った彦八は、かくれみのを物置に隠して床に就いた。明日もまた色々なイタズラをしてやろうと思いながら。

ところが翌朝、彦八が物置を見てみるとあのかくれみのが無い。外を見てみると、ちょうど庭でおばあさんがゴミと勘違いし、みのを燃やしているところだったのだ。彦八は灰になってしまったかくれみのを見てがっくりしたが、日頃からの知恵を働かせてあることを考えた。灰をすくいあげて自分の身体に塗りたくったのだ。すると彦八の身体はすーっと消えてしまった。「かくれみのなんかよりこの方が気軽でいいや」

姿かたちが見えない素っ裸の彦八は、またも町でイタズラをしまくる。ところが道端で売られているまんじゅうを盗み食いしたときに、口の周りについたあんこをなめているうちに、その部分の灰が取れてしまった。もちろん周囲からは灰が取れた部分だけが見えるわけだから、「空飛ぶ口」が飛び回っているように見える。「口のオバケだ!」まんじゅう屋のおやじは腰を抜かすし野良犬は吠え出す。もちろん町は別の意味で大騒ぎ。

これには彦八もびっくり。すたこらさっさと逃げ出すも、口が見えているわけだから町のみんなが追いかけてくる。やっとのことで川に飛び込み、逃げおおせたと思った彦八。ところが灰がすっかり落ち、正体がばれてしまった。もちろんこれまでのイタズラのことも突き詰められ、皆からこっぴどくしかられたそうな。

彦八の間抜けなようすを遠くからながめ、一人くすくすと笑っていたのは、他でもないあのてんぐだったそうな。


おしまい。

【補助解説】
「花咲かじいさん」や「桃太郎」などと比べると知名度は低いが、それなりに知られている昔話。自分は国語の教科書で読んだ記憶がある。物語に登場する天狗は、妖怪だとか仙人みたいに修行をつんだ僧だとか色々な話が伝えられている。ここでは不思議な道具を持つ、愛嬌のある妖怪、としてとらえられているようだ。

【何を学ぶか】
こんなかくれみのが本当にあるのなら是非ともほしいところだが、それはともかくとして。てんぐの立場からしてみれば「実は全然大したもので無い情報や事柄を、さも価値のあるようにして見せ付けて取引させようとする輩が世の中には居る」ということだろうか。ごく当たり前のことや誰でも知っていることを「特選情報」とか「貴方だけに教えます」とか「これだけ的中しています」といった言葉を並び立ててさも価値ありげに見せて、高値で売りつけようとする不届きな輩はどの世界にもいつの世にもいる者だ。支払った対価分だけの価値があると本人が認識すればいいのだろうが、大抵は「だまされた」と悔やむのがオチ。うまい話には十分以上に気をつけるべし。最近だと「IPOに当たる方法」だとか「未公開株をあなただけに」とか言う話か。

第一そんな「美味しい話」なら他人に教えて価値を下げるより、その情報で十二分に稼げばいいのだ。それを他人に売りつけるということは、元々価値がないか、情報の流布で価値が下がってもかまわないということなのだから。え?「わたしは十分に儲けたのでその喜びを貴方にも」だって? だったらその儲けた金そのものを下さいな、ってなもんだ(苦笑)。

まぁあとは、彦八の立場から考えれば、「どんなに有益な道具や情報も、使い方次第では無価値と等しい」ということだろうか。手間隙かけて役立つ情報や道具を手に入れても、それが使いこなせないのでは意味がない。情報や道具はあくまでも目的ではなく手段に過ぎないということを忘れてはならない。

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